「なんか変だな」を見逃さない目
訪問看護の現場では、日々のケアだけではなく「何か違う」を見逃さないことが、とても大切です。
それは、利用者さんの体調だけではなく、家の様子やちょっとした空気の変化まで含まれます。
訪問看護師は、まるで“生活のセンサー”のように、利用者さんの暮らしの中にある小さな変化を感じ取り、必要な支援につなげています。
今回は、そんな「気づき力」が発揮された一つの事例をお話ししたいと思います。
これは、私が訪問看護師として経験した、実際のエピソードをもとにした話です。
利用者さんの家で気づいた「洗濯物の山」
ある日、私の同僚である訪問看護師のKさんが、高齢のご夫婦が暮らすお宅を訪問しました。
その利用者さんは手術後に退院し、在宅療養をしている男性。
日々の生活のサポートは奥様が行っていました。
Kさんは、そのご家庭を担当してから約3ヶ月。
これまでの訪問でも特に大きな問題はなく、いつものようにケアを開始しました。
その日も、利用者さんの様子は一見いつも通りで、特に体調が悪いという話もなかったそうです。
しかし、Kさんはなぜか違和感を覚えました。
その理由は、洗濯かごに山のように積まれたシーツやパジャマ、タオルの存在でした。
普段はこんなに洗濯物がたまっていることはありません。
「もしかして、何かあったのでは?」
そう思ったKさんは、さりげなく利用者さんに話を聞いてみました。
本人が気にしていなかった大事なサイン
問いかけに対して、利用者さんはこう話してくれました。
「実は、ここ数日ちょっと体調が悪くてね。ベッドを何度か汚してしまったんだ。でも大したことはないと思って伝えなかったよ。」
その言葉に、Kさんはピンときました。
ご本人にとっては「少し調子が悪かっただけ」かもしれません。
でも、これまでの病状や年齢、既往歴を踏まえると、放っておくのはリスクがあると感じたKさん。
すぐに在宅医と連絡をとり、服薬の内容を調整することになりました。
この迅速な対応のおかげで、大きな体調悪化には至らず、数日後には症状も落ち着きました。
普段からの信頼関係がカギになる
このケースでは、「洗濯物が多い」という一見ささいな変化が、ケアの重要なきっかけとなりました。
訪問看護では、こうした“いつもとの違い”に気づけるかどうかが、大切な分かれ道になることがあります。
しかも、今回は普段からの関係性があったからこそ、ご本人も「実はね…」と話してくれたのだと思います。
私たちは、ただケアを提供するだけでなく、利用者さんの生活の全体を見守り、先回りして支援することが求められます。
玄関に置かれた靴の数、台所の様子、ベッドサイドの薬の減り具合。
どれもが「生活のサイン」であり、ちょっとした変化が、実は体調の変化の前ぶれかもしれません。
「なんか違うな」を信じて行動する
訪問看護師の「気づき力」は、日々の経験と観察から育まれていきます。
それは、医学知識だけでは補えない部分です。
人と人として向き合い、生活の一部に溶け込みながら支援する中でしか、身につけることはできません。
だからこそ、日々の訪問の中で、「なんか違うな」と思ったら、それを見逃さないこと。
その感覚を信じて、一歩踏み込むことが、結果的に大きなトラブルを防ぐカギになります。
生活全体を見る視点が命を守る
訪問看護ステーションまるっとけあでは、利用者さん一人ひとりの生活を大切にしています。
訪問中だけでなく、訪問していない時間も含めて「どう過ごしているのか」「どんなことに困っているのか」を感じ取ること。
それが、これからの訪問看護に必要な視点だと私たちは考えています。
洗濯物の山、薬の減り具合、ちょっとした表情の変化。
どれもが、利用者さんの「今」を伝えてくれる大事なサイン。
これからも、私たちは生活の中で生まれる“気づき”を大切にしながら、安心できる在宅生活を支えていきます。
「事前説明会」も随時開催しております

訪問看護に興味がある方、入社を悩んでいる方、今すぐではないけど入社を検討されている方等、訪問看護に関する不安を取り除いていただくために事前説明会を随時開催しております。
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